難病・中途障害者の社会参加シンポジウム

難病・中途障害者の現状と未来

~ 社会参加のみちすじ ~
平成14年度 社会福祉・医療事業団助成事業

2003年1月25日(土)

障害者を取り巻く状況は、社会参加していく上で厳しい現実があります。

難病・中途障害者のもたらすものその後の社会参加について 各界の代表者が発言し理解を深めました。
参加者は約100名に及びました。

第1部 講演「デンマークの生活の中から感じたこと」

講師 中口和己氏

中口和己氏

Promotion of the welfle setvis system【PWSS福祉研修館】
福祉に関する翻訳・医療福祉機器の紹介事業
医療福祉関係者、学生のセミナー事業
海外福祉留学コーディネイト事業etc
和歌山県出身、デンマーク在住

講演趣旨

「デンマークに住んでみてまず感じるのは、日本の税金よりはるかに高いが、デンマークの国民はそれを苦とは思っていない。
消費税25%と所得税もおよそ50%。
日本からみれば考えられない高負担だが、それを負担と考えず、自分達の将来のための貯金を国に預けている考えている。
その税金は、教育費(大学も)無料、病気になっても無料、老後の生活も保障されているという安心感がある。
だからこちらの人は貯金はあまりしないし、その必要がない。
日本では、子どもの教育費、病気になったときの貯金、老後への貯え、そういうことに備えて銀行に貯えなければならない。
結局は銀行に預けるか、国に預けるかのちがいだが、低負担低福祉か高負担高福祉か選ぶのはその国の国民だ。
デンマークの人々に聞いてみると税金を安くしてまで、今の福祉の質を落としたくないと言うのが一般的な考え。国民の合意があるわけだ。
それでも、実際の生活は夏3週間、冬2週間の外国旅行は当たり前というデンマーク人の生活には余裕があると思う。
道路事情、住宅事情もデンマークに分が有ると思う。
障害者が困窮状態にあるときは中央政府や市によって必要な居住施設が提供される。
20数年前からは、障害を持った人々は大きな施設から小さな施設、賄い付きアパート、 個人の住宅へと移動しているが、同時に教育を受けたりカウンセリングや介助のようなサービスを受けることが普通になっている。
日本は経済大国で、デンマークは生活大国ということだ。」

第2部 シンポジウム「社会参加への支援と難病・中途障害者の現状」

シンポジウム風景

コーディネーター
森田良恒氏
和歌山県難病団体連絡協議会会長

「それぞれの立場で難病患者・中途障害者に真剣に向き合っているようすがうかがえる。
社会参加は決して『仕事』だけではないがやはり一番大きな問題だ。
その意味では作業所の利用者資格に障害者手帳だけではなく難病患者の特定疾患受給者証もカウントできるように訴えていく必要がある。
また日本も障害者基準にICF(国際生活機能分類)を導入する必要があり、
いかなる障害や難病を抱えていても社会の一員として関わることのできる支援体制を確立しなければならない。」

シンポジスト
前原壮行氏
和歌山県福祉保健部障害福祉課在宅福祉班長

「措置制度から支援費制度に変わる。
厚労省はホームヘルパーの120時間上限を設けることには県も絶対に反対。
木村知事も徹底的に反対する姿勢である。
むしろ在宅をすすめる中で受け皿をもっと充実する必要がある。」

永井尚子氏
和歌山市保健所保健対策室長

「和歌山市難病患者家族交流会スマイルの発足は、保健所とパーキンソン病友の会との出会いがあった。
その後、単独の患者会への援助は困難なため市内の患者会に呼びかけて結成することになった。
現在定期的に交流会を開いているが、常に患者・家族の立場に立つことに心がけている。」

岡野真理氏
和歌山障害者職業センター主任カウンセラー

「障害者が企業に雇用され、給与が安定することが大切。
障害者職業センターはどんな障害かを問わない。
その人に合った就労の場はどういうものなのか、また訓練が必要なのか、その意味ではカウンセリングが重要になる。」

東本喜佐子氏
和歌山県難病団体連絡協議会副会長

「難病患者は働きたくても働く場がない。
一生治らないため精神的にも不安定だ。しかも『うつる、難病の家系』などと差別が絶えない。
一日も早い治療法の確立と、難病患者にも充分な経済的安定が得られるように 行政・民間企業が連携した社会的システムを作ってほしい。」

川田恵子氏
ワークショップフラット職員

「フラットは難病・中途障害者の作業所和歌山県第1号として開所した。
これがすべてを解決するものではないが、利用者にとって仕事の場であったり、 憩いの場であったりと求めるものも多様だ。
他の福祉施設や病院、役所などとの連携を深める必要がある。
いずれにしても利用が増え商品の置き場もないのが現状だ。
このニーズに応えていくのは社会の責務だと思う。」